内藤 富卿 |
内藤 私は昭和36年に小林先生に入門しましたが、当時は無名印社という名で生井子華先生と小林先生が指導に当たっておられました。先生もお若かったせいか非常に優しかったのが印象に残っています。謙慎の初出品は今も忘れもしませんが、両先生に見ていただいた「一竿風月」と「翰墨游戯」という作品でした。ご承知のとおり小林先生は厳格なお考えの持ち主で、篆刻という方寸の世界においても「法」や「格」というものを非常に重視されました。作品づくりにおいても、一つのものに固執するのではなく、広く学ぶことを常に力説されておられました。
和中 簡堂 |
梅原 新井先生もそうですが、私も日本芸術院賞のときの推薦者になっていただきました。篆刻という古文字を研究される立場から文字学を非常に重要視され、書家は文字を疎かにしてはならないという信念で一貫されたと思います。
田中節山書 |
田中 私どもの書象会は主に北魏系の楷書を書いていますが、あるとき、篆書の作品を出品した方がありました。後日、小林先生にお会いしたとき「この間の選考会に出ましたが、あの作品はもっと基本の勉強をしなくちゃ恥ずかしいですよ」と、厳しくも恩情溢れるご指導をいただいたのが思い出されます。